福岡県小郡市横隈の小児科

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子宮頸がんワクチンの積極的接種奨励の再開に際して(講演会のまとめ)

子宮頸がんはヒトパルボウイルス(以下HPV)の感染で起こる。HPVは200種類以上あり、性行為により感染し、約10年後に子宮頸がんの発生がピークとなる。日本ではHPV16,18の感染が子宮頸がんの原因の84.8%を占め、20歳の90%を占める。

日本では2013年定期接種となったが、重篤な副反応の疑いが多数報告され、2か月後には積極的接種奨励が中止され接種率は0.3%となった。先進国で最も低い接種率である。今年の4月積極的接種奨励が再開されたが、世界ではワクチンの有効性が報告される中、日本では頸がんは増加傾向にある。

Ⅰ:日本の子宮頸がんの現状                                            (1)子宮頸がんの発症者は11,000人(2017年)、死亡者は2,800人(2018年)と30~40代で増加傾向にある。その増加は30~34代の発生がピークであり年間1,500人発症し、異形成を加えると30~34歳代で年間6,000人と大変多くの発生を見ている。 

(2)結婚年齢の上昇に伴い出産年齢のピークは32歳であり、子宮頸がんのピークと一致しており、未産婦や子育て中の30歳代に死亡に関与している。Mothre killerと呼ばれている。

Ⅱ:HPVワクチンの有効性の報告                                     (1)2021年イギリスの報告:                                       ①高度異形成に関して:12~13歳でワクチンを接種(97%減少)、14~16歳(62%減少)、16~18歳(39%減少)  

子宮頸がんに関して:12~13歳(87%減少)、14~15歳(62%減少)、16~18歳(34%減少)          ☆12~13歳の女児に接種することにより、25歳までに子宮頸がんとその前がん病変がほぼ根絶することが示された。 

 (2)2020年スウェーデンから:ワクチンを接種した1,672,983人の10~30代女性の報告             ①4価ワクチンを17歳未満で接種すると88%で子宮頸がんが予防できた。17~30歳接種で53%、全体で63%が子宮頸がんを予防できた。 

 (3)2022年日本からの報告:初回接種年齢とHPV16/18感染率、セクシャルデビューの検討             ①初回ワクチンを12~15歳で接種した時のHPV16/18陽性率は0%、16~18歳は13%、19~22歳は35.7%、22歳以上は39.6%、未接種は47%であった。                                       ②セクシャルデビューの中央値は17歳であり、その年齢以降HPV16/18感染率は上昇する。

(4)2022年日本(新潟)からの報告:                                    子宮がん検診を受診した225~26歳女性を対象にした、性的経験、セクシャルデビュー、性的パートナー数を参考に、ワクチン接種者、未接種者間でのHPV感染率を比較した研究。                     ①HPV16/18感染率:ワクチン接種者(感染率0%)、非接種者(感染率5.4%)             ②HPV31/45/52感染率:ワクチン接種者(感染率3.3%)、未接種者(感染率10%)                 ③接種後8.5年経過しており、ワクチンの長期の有効性が示された。

Ⅲ:HPVワクチンの安全性:子宮頸がんの安全性は確認されており、水痘ワクチンと同等であるとされている。 

(1)HPVワクチンと「多様な症状」に関する疫学調査(名古屋の研究)にて安全性が証明された。                (2)接種後の重篤な副反応は10万人当たり約50人であり、その内90%は回復している。その症状は慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、起立性調節障害の体位性頻脈症候群にあたり、ワクチンを接種していない人でも10万人当たり20.4人に見られる。

(3)WHO,欧米ではワクチンとの因果関係を認めておらず、子宮頸がんの撲滅を目指すWHOは科学的根拠の少ない理由で接種を控えている日本を非難している。

Ⅳ:キャッチアップ接種について:

平成9年~17年生まれの女性は定期接種対象外であるが、令和4年4月~7年3月までの3年間、定期接種に準じたキャッチアップ接種を無料でできるようになった。                                 (1)根拠になった報告:性交経験のある16~26歳女性(子宮頸がん検診異常者、尖圭コンジローム感染者、性交パートナー5名以上は除外)に対し、4種類のHPVの感染率と調査した。                       ①4種類すべてに感染(0.1%)、②1~3種類に感染(26.8%)、③4種類に未感染(73.2%)

(2)未感染者でHPVワクチン接種群と未感染者で接種しなかった群で子宮頸がんの発生の調査を行った。        接種者群の子宮頸がん発症は2人/5306人に対し未接種者群は63人/5262人であった。                 性交渉のある16~26歳においてもワクチン接種により96.9%の子宮頸がんの予防効果が見られた。                        ☆以上の報告はあるが、20歳以上になってHPVの感染が成立すると、ワクチンの効果が低下するので18歳までの接種が推奨され、早期の接種が勧められる。

Ⅴ:重篤な副反応への対応:                                        HPVワクチン接種の積極的推奨の再開に伴い、以前はなかった専門医療施設が全国に整備されました。筑後地区は久留米大学が指定されています。産婦人科教室が中心となり、副反応を疑われる患者さんが出た場合、電話連絡を入れてもらえれば、なるべく早く、待たせることなく診療してくれるそうです。産婦人科、小児科、整形外科、神経内科、精神科などがチームを作って診療してくれ、現在11の症例に対応しているそうです。

講演をしてくれた久留米大学小児科の津村先生は「12~13,15歳の接種が大切なので、小児科の対応が大切だと思う、対策として2種混合際に女児にHPVのパンフレットを配布したらどうだろう?」と小児科の重要性を話されていました。