福岡県小郡市横隈の小児科

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With/Afterコロナ時代のインフルエンザ対策 (2023/7/25 長大 森内先生講演のまとめ)

Ⅰ:COVID-19パンデミックでの感染症の変化                                               コロナ流行時の感染対策対策として①マスク着用 ②手洗い ③換気 ④3密を避ける ④外出自粛などを行ってきた。その結果、感染症に変化が見られた。                                              (1)石鹸・アルコール消毒が有効なEnverope(外膜)を有するウイルスの感染が激減した                                (①インフルエンザウイルス ②パラインフルエンザウイルス ③RSウイルス ④ヒトメタニューモウイルスなど)

(2)手洗いが無効なEnveropeのないウイルス感染症の減少は少なかった (①エンテロウイルス ②ライノウイルス ③アデノウイルスなど)                                                        (3)家庭内の家族の交流、接触を介しての感染症は減少が見られなかった(①性感染症 ②食品由来の感染症  ③節足動物媒介感染症)

(4)RSウイルスに関して                                                      ① 0歳時に68.8%が感染し、1歳時:82.6% 2歳時:ほぼ全員感染する                                      ② 約半数は再感染を経験する                                                      ③ 3歳時の再感染率は33.3%に減少し、感染を繰り返すたびに次の感染にかからなくなったり、軽症化する部分免疫が得られる                                                                      ④下気道感染症は0歳児の22.4%に、1歳児の13.0%に見られる。

(5)インフルエンザに関して                                                               ① アメリカでは通常12月頃から流行が始まり、2月にピークをむかえるが2022/23では10月頃に流行が始まり12月にピークを迎えた。ピーク値は高かった。                                                    ② 集団免疫がない場合、季節外れに前倒しの流行が始まる(新型インフルエンザは夏に始まり、秋にピークを迎えた)                                                                  ③ 日本では2020/21も2021/22も流行がなかった。 欧米では2021/22の冬から春に小流行があった。         今シーズンの日本2022/23のインフルエンザ流行はダラダラつずくのも含めて昨シーズンの欧米の流行に近い。(この違いは欧米ではほとんどの人がコロナに罹患していたが、日本での感染者がまだ少なかったためと考えられる。) そのため、日本の2023/24シーズンでは2022/23の欧米のようなインフルエンザの拡大が心配される。

Ⅱ:感染後の抗体産生について

(1)          「2度罹患」しない感染症     繰り返し罹患する感染症                                   ウイルス種類       麻疹、水痘、ポリオなど     インフルエンザ、RS,ロタウイルス胃腸炎など    ブレイクスルー感染      ⊖               ⊕                                       感染経路      粘膜感染からウイルス血症、臓器へ   粘膜侵入し、そこで増殖し病変を起こす                   潜伏期          長い              短い

(2)抗体産生の過程                                                        ① 最初の抗原刺激の後、抗体産生に遅れが生じ、できた抗体量も少なく質も悪い                                    ② 2度目の抗原刺激を受けると、直ちに大量かつ高品質の抗体が産生される。                                  ③ 抗体の半減期は約1か月であり、6か月後には(1/2)⁶=1/64に減少する                                       ④ 抗体量が一定レベルを下まわると感染を防げない(ブレイクスルー感染)                                   ⑤ 抗体産生B細胞は長期間存在しており、ウイルス抗原刺激で増殖し、抗体増産体制を作る。                       ⑥ この抗体増産により感染予防、重症化予防が期待される。(潜伏期間が長ければその間に抗体が産生され発症予防できるが、潜伏期間が短ければ発症を抑えることはできない、しかし臓器での重症化予防は可能)

(3)インフルエンザ感染の場合                                                  ①鼻や喉の粘膜からウイルスが侵入:血液中の抗体は鼻の粘膜への移行が少なく感染予防効果は少ない                     ②潜伏期間が短いため抗体の増産は間に合わず、感染1~3日後に上気道炎・全身症状で発症                       ③気管支・肺への感染が伸展:肺への血液抗体の移行はある程度良好であるため、重症化を防ぐ                       ④呼吸障害を発症:原発性ウイルス性肺炎(発症3日以内)、二次性細菌性肺炎(一旦軽快後)        

(4)新型コロナウイルス感染の場合                                                  ①鼻。喉の粘膜からウイルスウイルスが侵入:mRNAワクチンは血中抗体価が非常に高く、気道粘膜への多くの抗体が分泌されるため、当初は感染予防効果が高かった。                                           ②感染後3~4日で上気道炎・嗅覚障害を発症:オミクロン株になり潜伏期間が短くなり抗体の増産が間に合わない                                               ③気管支・肺に感染が伸展、炎症反応の遷延・蓄積                                                    ④呼吸障害を発症:感染後約10日

Ⅲ:インフルエンザワクチンに関して                                                (1)インフルエンザワクチン接種が推奨される方(2022/6月)                                    ①65歳以上の方                                                           ②60~64歳で心臓、腎臓、呼吸器に機能障害があり、生活に制限がある方                                 ③医療従事者、ソーシャルワーカー                                                  ④インフルエンザの合併症のリスクが高い人(生後6か月~5歳未満の乳児、神経疾患のある子、妊婦)

(2)インフルエンザワクチンの有効性                                                 ①65歳以上の高齢者福祉施設入所者において、34~55%の発病阻止効果、82%の死亡阻止効果が見られた                     ②6歳未満の小児の発症防止に対する有効性は41~63%(2013/14~0217/18)                              ③3歳未満の小児の発症防止の有効性は42~62%(2018/19~2019/20)

(3)2011~2020年のインフルエンザワクチンの有効率                                            インフルエンザの種類       6か月~5歳未満   5歳以上    全体                                  インフルエンザ(A+B)       56%       35~33%   46%                                 インフルエンザ(H3N2)      47%       22~19%   33%                              インフルエンザ(H1N1)      63%       44~45%   57%                                 インフルエンザ(B)        63%       42~46%   54%

(4)ワクチン株と流行株(H3N2)が一致していなかった時でも6か月未満~5歳未満の有効性は52%と以外にも有効であった(一致していた時:50~60%)                                                          (5)ワクチン株と流行株(H3N2)が一致していなかった場合、5歳以上での有効性は認められなかった(期待できない)